動物取扱業の規制〔REGULATION OF ANIMAL HANDLING BUSINESS〕


2012(平成24)年動物愛護管理法改正
2019(令和元)年動物愛護管理法改正

 動物取扱業は、2005(平成17)年動物愛護管理法改正により、届出制から登録制に規制が強化されて以降、法改正のたびに規制が強化され、現在に至っています。このページでは、2012(平成24)年と2019(令和元)年の動物愛護管理法改正の概要について扱います。

 

2012(平成24)年動物愛護管理法改正
 動物の愛護及び管理に関する法律は、2012(平成24)年8月29日に3回目の改正が成立し、9月5日に公布され、2013(平成25)年9月1日より施行されました。
 主な改正点を、環境省の解説からピックアップしてご紹介します。

1.動物取扱業者の適正化
(1)犬猫等販売業に係る特例の創設

 現行動物取扱業を第一種動物取扱業とし、第一種動物取扱業者のうち、犬猫等販売業者(犬又は猫その他環境省令で定める動物の販売(販売のための繁殖を含む。)を業として行う者)について、次の各種の事項が義務付けられました。

[1] 幼齢個体の安全管理、販売が困難となった犬猫等の扱いに関する犬猫等健康安全計画の策定及びその遵守(第10条第3項、第22条の2関係)
[2] 飼養又は保管する犬猫等の適正飼養のための獣医師等との連携の確保(第22条の3関係)
[3] 販売が困難となった犬猫等の終生飼養の確保(第22条の4関係)
[4] 犬猫等の繁殖業者による出生後56日を経過しない犬猫の販売のための引渡し(販売業者等に対するものを含む。)・展示の禁止(第22条の5関係)
 なお、「56日」について、施行後3年間は「45日」と、その後別に法律で定める日までの間は「49日」と読み替える(附則第7条関係)。
[5] 犬・猫等の所有状況の記録・報告(第22条の6関係)

(2)動物取扱業者に係る規制強化

[1] 感染性の疾病の予防措置や、販売が困難になった場合の譲渡しについて努力義務として明記(第21条の2・第21条の3関係)
[2] 犬猫等を販売する際の現物確認・対面説明の義務付け(第21条の4関係)

(3)狂犬病予防法、種の保存法等違反を、第一種動物取扱業に係る登録拒否及び登録取消事由に追加する。(第12条第1項関係)

(4)第二種動物取扱業の創設(第24条の2~第24条の4関係)

 飼養施設を設置して動物の譲渡等を業として行う者(省令で定める数以上の動物を飼養する場合に限る。以下「第二種動物取扱業者」という。)に対し、飼養施設を設置する場所ごとに、取り扱う動物の種類及び数、飼養施設の構造及び規模、管理方法等について、都道府県知事等への届出を義務付ける。

2.多頭飼育の適正化
(1) 騒音又は悪臭の発生等、勧告・命令の対象となる生活環境上の支障の内容を明確化する(第25条第1項関係)。
(2) 多頭飼育に起因する虐待のおそれのある事態を、勧告・命令の対象に追加する(第25条第3項関係)。
(3) 多頭飼育者に対する届出制度について、条例に基づき講じることができる施策として明記する(第9条関係)。
3.犬及び猫の引取り(第35条関係)
(1) 都道府県等が、犬又は猫の引取りをその所有者から求められた場合に、その引取りを拒否できる事由(動物取扱業者からの引取りを求められた場合等)を明記する。
(2) 引き取った犬又は猫の返還及び譲渡に関する努力義務規定を設ける。

4.災害対応
(1) 災害時における動物の適正な飼養及び保管に関する施策を、動物愛護管理推進計画に定める事項に追加する(第6条関係)。
(2) 動物愛護推進員の活動として、災害時における動物の避難、保護等に対する協力を追加する(第38条関係)。

5.その他
(1) 法目的に、遺棄の防止、動物の健康及び安全の保持、動物との共生等を加える(第1条関係)。
(2) 基本原則に、取り扱う動物に対する適正な給餌給水、飼養環境の確保を加える(第2条関係)。
(3) 所有者の責務に、終生飼養や適正な繁殖に係る努力義務を加える(第7条関係)。
(4) 特定動物の飼養保管許可に当たっての申請事項に、「特定動物の飼養が困難になった場合の対処方法」を加える(第26条関係)。
(5) 動物愛護担当職員及び動物愛護推進員制度に関する国による必要な情報の提供等を定めるとともに、動物愛護に係る表彰制度を設ける(第41条の3・第41条の4関係)。
(6) 動物虐待等を発見した場合の獣医師による通報の努力義務規定を設ける(第41条の2関係)。
(7) マイクロチップの装着等の推進及びその装着を義務付けることに向けての検討に関する規定を設ける(附則第14条関係)。

6.罰則等
(1) 酷使、疾病の放置等の虐待の具体的事例を明記する(第44条関係)。
(2) 愛護動物の殺傷、虐待、無登録動物取扱、無許可特定動物飼養等について罰則を強化する(第44条~第49条関係)。

2019(令和元)年動物愛護管理法改正
 2019(令和元)年6月19日に、改正動物愛護管理法が公布され、2020(令和2)年6月1日に一部を除いて施行されました。
主な改正点を、環境省の解説からピックアップしてご紹介します。

1.動物の所有者等が遵守する責務の明確化(第7条関係)
 動物の所有者又は占有者は、環境大臣が関係行政機関の長と協議して動物の飼養及び保管に関しよるべき基準を定めたときは、当該基準を遵守しなければならないこととする。

2.第一種動物取扱業による適正飼養等の促進等
(1)第一種動物取扱業の登録拒否事由の追加(第12条関係)
 都道府県知事等が第一種動物取扱業の登録を拒否しなければならない要件を追加する。

(2)遵守基準の具体化(第21条関係)
 第一種動物取扱業者が遵守しなければならない基準は、動物の愛護及び適正な飼養の観点を踏まえつつ、動物の種類、習性、出生後経過した期間等を考慮して定める。犬猫等販売業者の基準はできる限り具体的なものとする。

(3)動物を販売する場合における対面による情報提供の徹底(第21条の4関係)
 第一種動物取扱業者が動物を販売する場合において、動物の状態を直接見せ、対面による情報提供を行う義務について、その行為を行う場所をその事業所に限定する。

(4)帳簿の備付け等に係る義務の対象の拡大(第21条の5及び第24条の4第2項関係)
 [一] 犬猫等販売業者に対する帳簿の備付け及び報告に係る義務について、第一種動物取扱業者のうち動物の販売、貸出し、展示その他政令で定める取扱いを業として営む者も対象とする。
 [二] 犬猫等の譲渡しを行う第二種動物取扱業者について、個体に関する帳簿の備付け及び保存を義務付ける。

(5)動物取扱責任者の要件の適正化等(第22条関係)
 [一] 動物取扱責任者は、動物の取扱いに関し、十分な技術的能力及び専門的な知識経験を有する者のうちから選任する。
 [二] 都道府県知事等が行う動物取扱責任者研修の全部又は一部を委託することができることとする。

(6)動物取扱業者に対する勧告及び命令の制度の充実(第23条関係)
 [一] 勧告に従わない第一種動物取扱業者について、その旨を公表することができる制度を設ける。
 [二] 都道府県知事が動物取扱業者に対して行う勧告及び命令について、特別の事情がある場合を除き、3月以内の期限を設ける。

(7)第一種動物取扱業者であった者に対する監督の強化(第24条の2関係)
 都道府県知事等は、第一種動物取扱業者がその登録を取り消された場合等において、その者に対し、当該取消し等の日から2年間は、動物の不適正な飼養又は保管により動物の健康及び安全が害されること並びに周辺の生活環境の保全上の支障が生ずることを防止するため、勧告、命令、報告の徴収及び立入検査を行うことができることとする。

(8)幼齢の犬又は猫の販売等の制限に係る激変緩和措置の廃止
 [一] 出生後56日を経過しない犬又は猫の販売等の制限について、激変緩和措置に係る規定(平成24年改正法附則第7条)を削除する。
 [二] 専ら文化財保護法の規定により天然記念物として指定された犬の繁殖を行う犬猫等販売業者が、犬猫等販売業者以外の者にその犬を販売する場合について、出生後56日を経過しない犬の販売等の制限の特例を設ける。(附則第2項関係)

3.動物の適正飼養のための規制の強化
(1)都道府県知事等による不適正飼養に係る指導等の拡充(第25条関係)
 [一] 都道府県知事等は、周辺の生活環境が損なわれている事態が生じていると認めるときは、当該事態を生じさせている者に対し、その事態の改善に必要な指導又は助言を行うことができることとする。また、当該事態が生じたことの起因となる活動に給餌・給水を追加する。
 [二] 都道府県知事等は、周辺の生活環境の保全等に係る措置に必要な限度において、動物の飼養又は保管をしている者に対し、飼養又は保管の状況その他必要な事項に関する報告の徴収及び立入検査を行うことができることとする。
 [三] 多数に限らず一頭のみの飼養又は保管であっても、措置の対象とする(例えば、1頭であっても吠え癖のある犬による頻繁な吠え声の発生の放置は措置の対象になり得る。)。

(2)特定動物に関する規制の強化(第25条の2及び第26条関係)
 [一] 特定動物を愛玩飼養等の目的で飼養又は保管することを禁止する。
 [二] 特定動物が交雑して生じた動物を規制対象に追加する。

(3)犬及び猫の繁殖制限の義務化(第37条関係)
 犬又は猫の所有者は、これらの動物がみだりに繁殖して適正飼養が困難となるようなおそれがあると認める場合には、所要の措置を講じなければならないこととする。

4.都道府県等の措置等の拡充
(省略)

5.マイクロチップの装着等
(1)マイクロチップの装着に係る義務(第39条の2関係)
 [一] 犬猫等販売業者の義務
 犬猫等販売業者は、犬又は猫を取得したときは、当該犬又は猫を取得した日(生後90日以内の犬又は猫を取得した場合にあっては、生後90日を経過した日)から30日を経過する日(その日までに当該犬又は猫の譲渡しをする場合にあっては、その譲渡しの日)までに、当該犬又は猫にマイクロチップを装着しなければならないこととする。
 [二] 飼い主の努力義務
 犬猫等販売業者以外の犬又は猫の所有者は、当該犬又は猫にマイクロチップを装着するよう努めるものとする。

(2)犬又は猫の登録(第39条の5及び第39条の7関係)
 [一] (1)によりその所有する犬又は猫にマイクロチップを装着した者は、当該犬又は猫について、環境大臣の登録を受けなければならないこととする。
 [二] 狂犬病予防法の登録手続の特例
 犬の登録があった場合における狂犬病予防法の登録手続の特例を設ける。

(3)環境大臣は、その指定する者に、犬又は猫の登録の実施等に関する事務を行わせることができることとする。(第39条の10関係)

6.その他
(1) 動物を殺す場合の方法に係る国際的動向の考慮(第40条関係)
(2) 獣医師による動物虐待等の通報の義務化(第41条の2関係)
(3) 関係機関の連携の強化(第41条の4関係)
(4) 地方公共団体に対する財政上の措置(第41条の5関係)

7.罰則の強化等
 動物の殺傷に関する罰則について、懲役刑の上限が2年から5年に、罰金刑の上限が200万円から500万円に引き上がり、虐待及び遺棄に関する罰則について、100万円以下の罰金刑に1年以下の懲役刑が加わる。また、具体的な虐待行為の例示をより広範に明記する。

8.施行期日
2020(令和2)年6月1日
【下記以外の規定】
2021(令和3)年6月1日
【2.(2)遵守基準の具体化及び2.(8)幼齢の犬又は猫の販売等の制限に係る激変緩和措置の廃止】
2022(令和4)年6月1日
【5.マイクロチップの装着等】


 


 
 
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