「人と動物の共生」と伴侶動物(3)

なお、動物の愛護及び管理に関する法律の前身の法律である動物の保護及び管理に関する法律を制定する際の国会審議過程での立法趣旨説明はどのようなものだったか、次にご紹介します。長文ですが、お付き合いください。

-----------------------------------------------------------------
第071回国会 内閣委員会 第44号
昭和四十八年七月十九日(木曜日)
   午前十時五分開議

――――◇―――――
○三原委員長 この際、動物の保護及び管理に関する法律案起草の件について議事を進めます。
 御承知のとおり、本件につきましては、先般来理事会等におきまして協議を続けてまいりましたが、その結果に基づき、加藤陽三君、大出俊君、鈴切康雄君、受田新吉君から、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四派共同をもって、お手元に配付いたしておりますとおり、動物の保護及び管理に関する法律案の草案を成案とし、本委員会提出の法律案として決定すべしとの提案がなされております。
    ―――――――――――――

○三原委員長 この際、その趣旨について説明を求めます。大出俊君
○大出俊議員 動物の保護及び管理に関する法律案の起草案につきまして、その趣旨及び内容の概要を御説明申し上げます。
 動物は、古くから人間の生活に必須のものとして、人の衣食の用に、使役に、そして愛玩用に供されてきましたし、また、人の健康の保持のために、科学上及び医学上の研究実験の用に供されるなど人類の生存、福祉及び発展に貢献してきましたことは、御承知のとおりであります。
 しかるに、わが国では、これら動物に対する取り扱いが科学研究用、食用及び観賞用において、また、愛玩用においてさえ往々にして適切な配慮を欠き、そのため動物に不必要な苦痛を与えております。
 他方、動物の保管に適正を欠くため、動物による人身被害等が生じ、また、動物により人が迷惑をこうむる事件も多く生じているのであります。
 従来、これら動物に対する立法措置といたしましては、文化財保護法、軽犯罪法、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律、狂犬病予防法等があり、さらに地方公共団体が各地の実情に応じて制定した飼い犬等取締条例等があります。これらの法令は、それぞれの制定目的等を異にしており、動物の保護及び管理について総合的、統一的な措置を講ずることは困難であり、十分にその実をあげておらない実情であります。したがいまして、動物保護の見地から、また、動物による人の生命等の被害防止の見地から、動物の保護及び管理についての総合的な措置が必要と存ずるのであります。
 欧米等諸外国におきましては、数十年前から動物の保護に関する法律の制定を見ているのであります。文化国家であるわが国といたしまして、また、わが国における動物の保護に対する国際的評価を改善する上からも、動物の保護のための法律の制定が急務であると考え、ここに動物の保護及び管理に関する法律案の起草案を作成した次第であります。
 次に、この起草案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 第一に、動物の保護に関する原則、すなわち動物の保護に関する基本的な考え方を国民の前に明らかにして、動物の保護に関する国民の心がまえについての指標を与えることとしております。このため、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、または苦しめることのないようにするのみではなく、その習性を考慮して適正に取り扱うべきことを明らかにしております。
 第二に、動物愛護週間を設けることといたしました。毎年九月二十日から同月二十六日までを動物愛護週間とし、国及び地方公共団体は、その趣旨にふさわしい行事が実施されるようにつとめなければならないこととしております。
 第三に、動物の所有者または占有者は、動物を適正に飼養し、保管することにより、動物の保護及び動物による人の生命等の被害防止につとめなければならないものとするとともに、地方公共団体は、条例で、動物の飼養及び保管に関し、必要な措置を講じることができることとしております。
 また、動物の保護のための具体的な行為、すなわち、負傷動物等の発見者の通報措置、犬及びネコの繁殖制限、動物を殺す場合の方法、動物を科学上の利用に供する場合の方法及び事後措置に関しても規定しております。
 第四に、都道府県または政令で定める市は、犬またはネコの引き取りを求められたときは、これを引き取らなければならないものとするとともに、国は、都道府県または政令で定める市に対し、予算の範囲内において引き取りに関する費用の一部を補助することができることとしております。
 第五に、内閣総理大臣は、関係行政機関の長と協議して、動物の適正な飼養及び保管、動物を科学上の利用に供する場合の方法及び事後措置に関する基準並びに犬及びネコの引き取り、負傷動物等の収容及び動物を殺す場合の方法に関する必要事項を定めることができることとするとともに、これらの基準または必要事項を定め、または変更、廃止しようとするときは、動物保護審議会に諮問しなければならないこととしております。
 第六に、総理府に、付属機関として、動物保護審議会を置き、動物の保護及び管理に関する重要事項を調査審議することとしております。
 第七に、牛、馬、犬、ネコなどの保護動物を虐待し、または遺棄した者を処罰する規定を設けております。
 以上が本起草案の趣旨及びその内容の概要であります。何とぞすみやかに御決定あらんことをお願い申し上げます。
---------------------------------------------------------
 このようにして、動物の保護及び管理に関する法律は、1973(昭和48)年10月1日法律第105号として成立しました。
 この1973年当時の立法趣旨説明において、「科学上及び医学上の研究実験の用に供される」動物、すなわち実験動物、そして動物実験について言及され、また、実験動物に並んで、食用、観賞用はもとより、愛玩用においてさえ、「往々にして適切な配慮を欠き、そのため動物に不必要な苦痛を与えて」いると説明しているのです。わたくしたちは、この事実を、重く受け止めなければなりません。
「人と動物の共生」と伴侶動物がテーマですが、人と人についても、深く思いを致す社会の到来を願い、本稿を終わります。


この1年、皆さまにはとてもお世話になりました。来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

2015年12月31日